OADG海外通信(Vol.15)
(2003.10.20)
米国TiVoに見る情報家電のあり方

TiVoとは米国でデジタル・ビデオ・レコーダー(DVR)として最大のシェアをもつ製品。シリコンバレーのIT系ベンチャーTiVo社が1999年に最初の製品を発売して以来、長らく低空飛行のセールスが続いていたが、昨年あたりから製品の評判が広まり、今年末には100万人のユーザーを獲得する見込みだ。ハード的には一般のDVRと変わらないTiVoがユーザーを惹きつける秘密はなんなのであろうか?

TiVoの仕組み
TiVoは他のDVRと同様にハードディスク(HD)に番組を録画する方式になっている。最新モデルのTiVo Series2では最大80時間の番組録画が可能で、まずユーザーはテレビにTiVoを接続し、さらにモデムを介して電話回線につなぐ。こうしておくと1時間に数回といったペースでTiVoのサービスセンターからEPG(電子番組表)が、電話回線を経由してダウンロードされる。

ユーザーはテレビ画面に写し出されるEPGを見ながら見たい番組を録画予約する。たとえば好きなタレントの名前をインプットしておくと、この名前をキーワードにして番組を検索し、彼らが出演している全ての番組を録画してくれる。番組の放送時間を知らなくても、番組名さえ指定しておけば、機械が自動的に探して録画しておいてくれる。さらに番組の放送時間が、突如変更になっても、TiVoはそれに対応して録画忘れを未然に防ぐ。

HDへのデジタル録画方式なので、放映中のTV番組の一時停止やリプレイなどのタイムシフト再生機能もある。面白いことにTiVoには電源スイッチがない、つまり常に稼動し番組を録画し続けるコンセプトのDVRなのだ。

また、今年6月にはPCに保存されたコンテンツにアクセスできるようにするソフトウェア「Home Media Option」が追加された。これはTiVoでMacやWindows PCのハードディスク上にある音楽ファイル/デジタル写真などのコンテンツにアクセスして、これらを家庭内の有線/無線ネットワーク経由でTVやステレオなどにストリーミング配信できるようにするもの。 このようにTiVoは家庭内ネットワークにおけるホームサーバーとしての位置付けも狙っている。

TiVoの標準小売価格は199ドル(録画時間40時間)と299ドル(録画時間80時間)で、プロモーション期間には通常50ドル程度のリベートによるメーカーディスカウントが行われる。EPGの利用料は月額12.95ドルもしくは生涯プラン(デバイスの寿命が尽きるまでサービスを利用できる)が299ドルとなっている。前述のHome Media Optionは99ドル。

何故ユーザーはTiVoを支持するのか?
セールスは伸びているもののTiVo社の経営は未だに黒字に転換していない。にも関わらず、業界がTiVoに注目するのは購入したユーザーがきわめて高いユーザー満足度を示しており、米国におけるDVRの標準として認知されようとしているからだ。TiVo社によると「TiVoのEPGサービスを受けているユーザーの96%以上がTiVo なしでは生活できない」と回答し、サービスの解約率は実に1%未満となっている。

ユーザーがTiVo支持した最大の理由は、徹底的にユーザーの利便性を追及したEPGサービスによるものだろう。実際にTiVoを使ってみると、まさに至れり尽くせりといった感のサービスを実感でき、ユーザーが毎月12.95ドルを払うのもうなずける。

例えばSeason Passという機能は見たいシリーズ番組の全話や好きなスポーツチームの全すべての試合放送を自動的に検索して録画してくれる。またWishList という機能ではユーザーがどんな番組を見たいか具体的な条件が入力できる。例えば女優:ジュリア・ロバーツとだけ設定して、彼女が出る全ての番組を自動的に録画することもできるし、タイプ:映画、ジャンル:コメディとさらに条件を絞り込んで番組選びをすることも可能だ。

もうひとつの要因として挙げられるのが、TiVo がオープン指向のハードウェアとソフトウェアとの組み合わせから成っている点だ。その心臓部は IBM製 PowerPCプロセッサとRAM、そしてIDE ハードディスクが1個か2個、という構成。TiVo の使用するオペレーティングシステムはオープンソースの Linux で、TiVo ソフトウェア自身はそのオペレーティングシステムの上で走る専用のアプリケーションとして動作する。

オープンな設計となっているため、TiVo Community Forumなどのユーザーフォーラムでは、改造やハッキングによる機能拡張が競って行われている。例えば、HD交換による録画時間の延長や、PCとの連携機能などは、現在の最新モデルに組み込まれる以前から、ユーザーにより方法やソフトが開発されていた。こういったユーザーグループがTiVoの製品としての完成度を高めている点は、Palm PDAがその成功においてユーザーグループが大きな役割を果たしたのに似ている。

日本では?
TiVo成功の背景には、地上波、ケーブル、衛星含め総数18000チャンネルにも上る米国のTV放送において、視聴者が番組表の中から自力で好みの番組を検索するのは非常に困難であるという状況がある。

一方日本ではそれほどチャンネル数はないし、ほとんどのローカル局やケーブル局は、中央の番組を中継しているに過ぎない。従ってトータルのコンテンツ数は、米国とは比較にならないほど少なく、EPG機能へのニーズは低い。実際、ソニーがチャンネルサーバーという位置付けで2002年に国内発売したコクーンは、まさにTiVoと同様の仕組みを持ったDVR(事実TiVoの技術ライセンスを受けている)であるが、日本市場ではEPG機能を持たないDVRのほうが遥かに多くのシェアを獲得している。 

しかしTiVoが示した“ユーザーの利便性の追求したサービス”“オープン設計”といったコンセプトは、今後の情報家電にとって重要なポイントだと考えられる。特に日本では情報家電というと、とかく映画や音楽などの「キラーコンテンツの確保」に議論がいきがちだが、既に存在する無尽蔵のコンテンツを便利に利用するためのサービス的コンテンツこそ、家電メーカーが自ら作ることのできるキラーコンテンツとなるのではないだろうか?

関連URL
TiVo Inc. (http://www.tivo.com)
TiVo Community Forum(http://www.TiVocommunity.com)

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